=歴史探訪フィクション=
(2)
祐介は松江署に戻り、車に置いているノートパソコンへデータを移した。 すぐに、恵美もやってきた。 「松江署に用事も無いのに、車を止めて大丈夫なの?」 「無い訳じゃないよ。先日取材した事件のその後の経過も聞こうと思っているから、大丈夫だよ」 そう言いながら、祐介は、恵美のハードディスクにコピーした。 「ほら、出来上がり。その中から使えそうなのを選んでよ」 「ありがとう。助かったわ。あのプロジェクトの紹介パンフレットに、宍道湖の夕日の画像も入れることになり、私が松江市に住んでいるので担当することになったのよ。私なんかじゃ無理だと言ったんだけど。もし、使えそうなのが無かったら、出雲大社の画像を増やせばいいからって」 「では、出雲大社の映像は誰が?」 「プロジェクトの理事長補佐をしている三上さんよ。結構写真の腕前は良いそうよ。自分で言うくらいだから、自信はあるんでしょうね」 「ああ、あの人。大学でお父さんの助手だった人だろう」 恵美の父親の加藤龍三は、近畿地方にあるK大の助教授をしていたが、恵美が中学の頃に島根県のS大の教授として招かれた。そして、このプロジェクトの発足においても、理事長として中心的な役割を果たしている。 「三上さんは、父が、S大に来て、最初の研究生だったの。何でも、父が、かなり見込みのある学生だということで、ずっと研究室に残していたそうよ。だから、このプロジェクトでも、父が理事長補佐にしたみたいね」 「なるほど。結構、優秀なんだ」 「そうなんでしょうね。じゃあ、今日は本当にありがとう」 「礼を言われるほどのことでもないよ。恵美さんと一緒に夕日が見れたのだから、こちらこそ感謝だよ。では、また」 そう言って、別れようとした時だった。 祐介の携帯電話が鳴った。 「はい、佐田です。今、松江署の前です。ええっ! どういうことなんですか。はい、分かりました。すぐに向かいます」 祐介は、出発しようとしている恵美の車に走り寄った。 「何かあったの?」 「大変だよ。プロジェクトの大泉氏が、亡くなった」 「大泉さんが! どうして?」 「どうも、何らかの事件に巻き込まれたようだ。詳しいことはよく分からないが、殺された可能性が高い」 「ええっ! 本当に。何処で?」 「奉納山の下にある『仮の宮』だそうだ」 『仮の宮』とは、出雲の地で毎年執り行われる『神在祭』の時に、全国の神々が集まる神社で、出雲大社から西へ500㍍ほど行った辺りにあり、『上の宮』とも呼ばれている。 「大変だわ。私、すぐに行かなくちゃ」 「僕もだ。その前に、松江署で何か情報があれば聞いてから行くよ」 「じゃあ、私は先に行ってるね」 「ああ、また後で」 恵美は、直ちに出雲に向けて車を発進させた。 ・・・大泉さんが、どうして? |
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邪馬台国発見
ブログ「邪馬台国は出雲に存在していた」
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