オーシャン・ドリーム号の悲劇 船 ・・・20年目の夏
プロローグ
  ジリジリと照り付ける真夏の暑い日差しが、肌に突き刺すかのように痛い。
 福山勇一は、右手に持っていた新聞で、日光を遮るようにしながら、ステーションビルの前に立った。

 「福山さん、こちらです。今日もよろしくお願いします」
 あらかじめ連絡しておいたので、若木晴美が車で迎えに来ていた。
 「忙しいのに来てくれてありがとう。それにしても、今年の夏の暑さは一体どうしたんだろう。半端じゃないよ」
 「本当に、そうですね。車のエアコンもこの暑さじゃ、とても役に立ちません。ところで、今回の出張先は、ご出身の出雲だったそうですね」
 「ああ、ちょっと講演を頼まれてね。出雲市の観光アドバイザーといったこともやっているので、ちょくちょく出雲には帰っているんだよ」
 「本当に、いつもお忙しそうですよね」
 福山は、『関東プロデュース』という様々な企画を立案・提供する会社を経営しているが、ほとんどは、全国各地を駆け巡っている。クライアントは、企業や自治体、あるいは大学や放送局だったりと、依頼があれば可能な限りどんなことでも手がけている。そして、自らも番組に出演したりもする。今は、週に一度、横浜のFM局で、とあるニュース番組のコメンテイターを勤めている。
 若木は、その担当のデイレクターだ。
 「喜美恵ちゃんは、前回、夏風邪で喉の調子が良くないと言っていたけど、もう治ったのかなあ」
 「クーラーのせいだと言っていましたが、今日は調子良さそうでしたよ」
 「そう。それは良かった。でも彼女は、沖縄の出身だから夏には強いかと思ったんだけど、そうでもないのかな」
中里喜美恵が、その番組のキャスターをしている。
 「暑いのは大丈夫のようですが、クーラーが苦手みたいです。それより、福山さんも前回は二日酔いで辛いとおっしゃってましたが、今日は大丈夫ですか」
 「僕は、酒には強い方なんだが、あの時は、以前一緒に働いていた同僚とちょっと話し込んでしまってね。不覚にも遅くまで飲んでしまったんだよ。今日は、いつも通り、大丈夫だよ」
 「そう言えば、福山さんは以前新聞記者だったそうですね。それも、全国紙のT紙だったそうじゃないですか。どうして辞めてしまったんですか」
 「クビだよ、クビ。働きが悪かったからね」
 「ご冗談を。そうだ、これ、今日の特集のアウトラインです。目を通しておいてくれませんか。コメントも考えておいてください」
 「ああ、いいよ」
 若木が助手席に置いていた資料を、後部座席に座っている福山に手渡した。
 そこには、『20年目の夏』とタイトルがあった。
 そう、あれから、もう20年が経ったのだ。
 先ほどの昔の同僚との話というのも、実はその20年前の出来事についてだった。

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